ベン・メリア遺跡から南へ約30分ほど下ると、国道6号線に行きあたります。この辺りがダムデック(Damdek)の中心地で、荷物を積んだ荷車が道路を行き交い、道路沿いには店舗が軒を並べていました。青十字を掲げた薬局も見えます(右写真)。
母親に連れられた子供が見ていたのは、店頭に並ぶ子供用の乗り物でした。その左横には、たくさんの扇風機が並べられていました(左写真)。時間は11時半頃。右写真のテントがけの食堂には、食事をしている大勢の男性たちの姿がありました。
市場もありました。市場の中を歩いている男性は、その服装からオートバイで遺跡めぐりをしている観光客かも知れません。右のテントの中の男性が、好奇のまなざしで見ているので、やはり市場でも観光客は多くはないようです。
Damdekの中心地に並ぶ店舗や市場は、観光客用でなく、この町や周辺の村で暮らしている地元の人たちが利用しているようです。
中心付近から西へ数分走ると、国道6号線の両側に田園風景が広がります。農家の庭や田に、脱穀が済んだ稲わらが山積みにされていました。
季節は3月末。この時期にカンボジアで収穫されるのは乾季米です。カンボジアでは、4月~10月頃までが雨季で、11月~3月頃までが乾季にあたります。
雨期に収穫される米は「重い米」、3月に収穫される乾季米は「軽い米」と呼ばれます。雨季の稲作は苗を育てて田植えをしますが、乾季は稲モミを直接田んぼに蒔きます。価格は重い米に比べ少し安いということですが、雨季の洪水被害を避けるために行われているそうです。
乾季の稲作には、水の確保が欠かせません。Damdekの乾季稲作は、南にあるトンレサップ湖へ流れ込む川と灌漑に支えられているのでしょう。
アンコール遺跡まで約30㎞、ロリュオス遺跡まで約20㎞、ベンメリア遺跡までは約30㎞、そしてトンレサップ湖まで20㎞弱という地の利を生かして、Damdekでは牛車と農業体験のできる農村ステイのツアーが始まっているようです。観光客が多く訪れる乾季に田舎暮らし体験を企画したDamdek。これから市場や店舗にも観光客の姿が見られるようになるのでしょう。
写真/文 山本質素、中島とみ子