ロハール村では、前回紹介したスコーの他に、伝統楽器トローの制作もおこなわれていました。スコーづくりをしている小屋への道に「TRADITIONAL KHMER MUSICAL INSTRUMENT HANDICRAFTS」の案内板が出ていました。入ると、いくつか楽器作りをしている小屋が見えました。
トローを制作販売しているという家を訪ねました。庭に、主人の男性と、2人の女性、2人の若い男性が集まっていました(左写真)。女性たちは、たくさんのトローの棹を前に坐っていました。若い女性はトローの棹を立てて、位置関係を計っているようすでした(右写真)。
左写真は、完成したトローと弓です。ザルの中には糸巻の部品が見えました。トローの胴の部分は円形で、ヤシの実の殻が使われているように見えました。右写真は、まだ組み立てていない胴の部分で、細かい穴と模様が彫られていました。
以下に、参考として中国の二胡の仕組みを、写真とともに引用掲載させてもらいました(引用;http://www.it-japan.co.jp/nikoc/what/top.htm)。棹は、硬くしかも木材密度が高いほうがさらに音色はよい。胴は、共鳴箱で、大体棹と同じ木材を使い、六角形あるいは八角形のものが多いですが円形、楕円形など様々です。糸巻は、棹と胴と同じ木材で作るのは一般的で、木製および先端の部分に金属製の物があります。駒は、色々な木材で作られます。弦は、二本のうち、細いほうは”外弦”といい、太いほうは”内弦”といい調弦が必要です。右写真は、ロンタオ地区でつくられているトローです。
トローの演奏は、弓を使って胴の少し上あたりを、できるだけ水平になめらかに弦をあてて弾きます(右写真)。トローは、その形も仕組みも二胡とよく似ています。
ある小屋では、女性が棹を作っていましたが(左写真)、そばに、棹を丸く削るための機械が見えました(右写真)。
カンボジアでは、正月や盆、雨乞いの儀式や結婚式など、音楽は生活の一部として伝承されてきました。しかし1975年から始まるポル・ポト政権下においては、伝統音楽も否定され、多くの伝統楽器が失われるとともに、伝統音楽を演奏する技術を持つ人も少なくなってしまったそうです。
ロハール村内でつくられているスコーやトローの多くは、土産物品として観光客に提供さるようですが、これら伝統楽器の制作を通して、音楽が再び村の人たちの生活の一部として継承されていくことを願いたいと思います。
写真/文 山本質素、中島とみ子