ARTISANA ANGKOR

シェムリアップにあるARTISANA ANGKOR(アーティザン・アンコール)の工房に立ち寄ったのは、2014年9月のことでした。アーティザン・アンコールは、1992年にカンボジアの文部省とフランスの外務省とによって設立された職業訓練校として始まり、1998年にはEUからの援助により団体として設立、そして、2008年に、カンボジアの登記会社となりました。現在ではカンボジア伝統工芸の技術学校、工房、店舗などを運営しています。
右写真は、シェムリアップのアーティザン・アンコールの一画にあるギャラリーで、訓練生たちが作った製品が展示販売されています。
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入口を入ると、経営理論を記したパネルがありました(左写真)。
アーティザン・アンコールは、農村に住む若い世代の人々に、高い水準の技術トレーニングを行い、そして生計を立てることができる職業を供給し、実状彼らが故郷にて仕事ができるよう手助けしています。(自立支援)今日、アーティザン・アンコールは、1000人以上の人々を雇用しています。農村への工房設置により、農村で生活をしているカンボジア人の家族全体の所得が増加し、シェムリアップ周辺の人口過疎化を防いでいます。 また、アーティザン・アンコールは、カンボジアの社会政策のモデルでもあり社会保障と医療手当が完備された条件のもと、全社員と会社間にて、正式な雇用契約が交わされています。 職人達は組合を形成し、アーティザン・アンコールの20%の株を所有しています。
右写真は、工房の中に貼ってあった手話の表です。この工房では、耳の聞こえない人も働いているので、彼らとのコミュニケ―ションを図る一助になっているのでしょう。工房が目指す農村の若者の自立支援の中には、身障者の自立支援も含まれているようです。
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工房では漆、石彫り、木彫り、金属工芸、磁器など実際に職人たちが作業をする様子を見学することができました。工房で習得できる技術は、カンボジアの伝統工芸品としての石仏彫りや木彫り、細工を施した木製の小物などです。
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工房の中では、クリーム色のシャツを着た人と、あづき色のシャツを着た人とが働いていました。確かなことはわかりませんが、クリーム色のシャツを着ている人たちは訓練生で、技術を持っていて、会社と雇用契約をしている職人の人たちがア付き色のシャツを着ているようです。
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クリーム色のシャツを着ている若者たちは、見本を傍において作業をしていました。彫刻のモチーフは、アンコールワットに彫られている伝統的なクメール模様が多いということです。
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石彫り工房の入口に、色の異なる石が置いてありました。ここでは、これらの石を使って、仏像などを彫っていました。
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台の上に、お手本の彫刻を置いて、見ながら作業をしている様子が印象的でした。彼らが彫っていたのは、アプサラ、仏、象などをでした。
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伝統的な彫刻を伝え引き継いでいく姿勢は、壁面に掛けられた仏像頭部の形や比率などが記されたパネルからもわかりました。
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木彫りも、石彫りと同様に、お手本を見ながら、寸法や形など丁寧に測っては彫っている姿が印象的でした。木彫りの木造頭部には、右写真に見るように製作者の番号が刻まれています。空港の土産物売り場で、その番号を伝えると、その人の作品を出してきてくれると聞きました。単なる土産物ではなく、作った人に還元される仕組みもあるのかもしれません。
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工房内には、黄色い蚕の繭と、繭から紡いだ生糸が色染めされて展示されていました。
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シェムリアップのアーティザン・アンコール工房の位置と、シェムリアップ近郊に展開している工房などがが記されてた地図パネルもありました(左写真)、右の緑の円がシェムリアップ市街地です。市街地を東西に通っている赤い線が、国道6号線で、国道6号線の北に長方形で西バライが記されています。前回紹介したプオック地区のシルクファーム(中写真)は、西バライの左上に記されています。市街地にある工房から西へ約16kmほどのところに位置します。また、西バライと国道6号線を挟んだ南にあるゴックトライ村のARTISANS ANGKOR工房(右写真)では、20人ほどの村人が働いているとのことです。
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カンボジアにおける社会政策の一つのモデルと位置付けられているアーティザン・アンコールでは、会社と全社員との間で正式な雇用契約が交わされ、社会保障と医療手当が完備されているということです。一方、農業を生業としてきたカンボジアですが、シェムリアップ近郊では、農地を持たない若い人たちも増えています。彼らの大多数は、雇用の不安定な建築現場で働いたり、土産物を売ることによって生活を支えている現状があります。

写真/文 山本質素、中島とみ子

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