プリア・アン・トム寺院の入口周囲には、食堂や土産物店が並んでいました。アンコール王朝の始まりの地とされるプノン・クーレンは、現在では、上座部仏教の聖地として人々の信仰を集め、クメール正月には、たくさんのカンボジアの人々が初詣に訪れるそうです。カンボジアでは、1月のインターナショナル・ニューイヤー、2月の中国暦の旧正月、そして4月のクメール正月と、年3回の正月があります。
食堂の店先に、焼いた魚や鶏肉などが並べられていました。他の観光地の屋台などでも見かけた魚や肉に混じって、ここでつくられたと思われるピクルス(漬物?)などがビニールに入って売られていました。写真の食堂で昼食をとることになり、店先で鶏肉などを選びました。選んだ鶏肉は、店の女性が焼きなおして棒から外し、まな板の上で切り分けてくれました。
店先にいた若い女性(上右写真奥)が店内に入り、鍋にご飯を盛り付けてくれました。彼女のふるまいから、出産のために村に里帰りをしているように思えました。切り分けた鶏肉やキュウリにご飯を添えて昼食になりました。
食堂の壁面の床と壁とに、神棚のようなものが祀られていました。同じような棚は、シェムリアップ市街地のホテルやレストランでも見かけました。中国系の人たちから始まった商売繁盛を祈願するこのような棚は、最近の流行で、カンボジアの人たちの間でも祀られるようになっているそうです。お供え物の数は奇数とされ、この店でも5つのカップが供えられていました(左写真)。屋根下の梁からは、くすだまが下がっていました。食堂から見えた向かい側の店々には、衣類などがたくさん並んでいるのが見えました。
衣類が並ぶ店先に、買い物をしている僧侶たちの姿がありました。僧侶たちを乗せてきたのでしょうか。通りには数台のバイクが停まっていました。店番の女性や傍で遊んでいる子供たちは、プレアアントン村に住んでいるのでしょう。
左写真の衣料品売り場に、ボディマネキンに巻かれた僧衣が置かれているのが見えました。僧侶たちはこうした店で僧衣を購入しているのでしょうか。多くはありませんでしたが、観光客も訪れていました(右写真)。
私たちが訪れた12月27日のプレアアントン寺の周辺は、観光客の姿は多くはありませんでしたが、店にはたくさんの品物が並んでいました。クメール正月には、カンボジア国内から多くの観光客を集めているこの場所は、プリア・アン・トム寺院の僧侶や村人にとって、日常生活を支えてくれる市場にもなっているのでしょう。
写真/文 山本質素、中島とみ子