ロハール村の入り口付近に、「TRADITIONAL KHMER MUSICAL INSTRUMENT AND OXCART HANDICRAFTS」と書かれた看板がたっています(左写真)。ロハール村では、伝統的なクメール楽器と手作り工芸品の牛車が制作されています。伝統楽器については、すでに紹介しましたので、今回は、手作り工芸品の牛車を制作する作業小屋の様子を、紹介していきます。
2012年12月23日、ロハール村にある手作り牛車(HANDICRAFT OXEN CART)の作業小屋に立ち寄りました。朝の9時30分ごろでしたが、少年が3人、小屋で作業をしていました。カンボジアの学校は2部制なので、彼らのこの日の授業は午後からのようです。手前の少年の坐っている台の前には、たくさんの木製の牛車がつんでありました。奥の方にも、作業をする少年の姿がありました。
手前の少年は、手に持った接着剤で、模型の牛車に幌を張り付ける作業を(左写真)、奥にいた少年は、定規や鉛筆、それに直角を計る道具を使って、手ノコギリで、寸法に合わせて板をカットしていました(右写真)。
もう1人の少年は、牛を彫っていました。彼の前にある棚には、牛車の模型が置かれていました。上の2つより古く見える中段の模型は、車輪の軸の数も多く、技術的には勝っているように思えました。そして、台の上には、下彫り段階の牛の模型がありました。少年が手に持っているのも、この下彫り段階の牛でした。
台の上に置かれていたノートには、作業の手順などが描かれていました(左写真)。小屋の屋根下に張ってある紙に書かれた絵と文字は、注意事項(禁止事項)でしょうか(右写真)。
この作業小屋は、家屋にバナナの葉で葺いた屋根を差し掛けて造られていました。大人の職人さんたちが小屋を使用する前の時間、少年たちが、簡単な作業を手伝いながら、牛車づくりを学んでるようでした。ちなみに少年が着ている青いTシャツには、日本語で「はじめまして」と書いてありました。
続いて訪れた作業小屋には、人の姿はありませんでしたが、牛車の模型が天井につるしてありました(2012年12月23日10時4分)。
作業場には、木片や定規などが雑然とまとめて置いてありました。ガイドさんが、吊るしてあった牛車の模型を降ろして見せてくれました。全長50センチほどもある牛車の模型は、精巧に作られていました(右写真)。
作りかけの部分品もザルの中に入れてありました。手回しの工具(?)も置かれていて、そのままいつでも作業に入れるようになっていました。
もう一つの作業小屋では、少年が電動カンナを使って、板を削っていました(2012年12月23日 10時11分)。板の端まで削ると、平らに削れたか片眼をつむって板の表面を確認していました。その様子は、もう一人前の職人さんのようでした(右写真)。
この作業場は、小屋掛けではなく家屋に続けて作られていて、少年が使っている電動カンナのほかに、いくつかの電動工具(上左写真)、電動ドリル(下左写真)などがありました。傍らには、小さい男の子たちもいました。
1年後の2013年12月22日、午後3時、牛車づくりの小屋を訪ねた時、大勢の少年たちがいました。彼らは、作業をする男性たちのそばで、牛車づくりを見ていました。その中に1年前に、ボンドで牛車の幌をつけていた少年の姿もありました。
牛車の模型作りをする小屋3ヵ所のうち、2か所で、少年たちは、小さいころから作業小屋の傍で遊び、やがて接着をする作業や、下彫りの作業を手伝いながら経験を積み、牛車を作ることができるようになっていくのでしょう。
写真/文 山本質素、中島とみ子